本記事には、手術中の様子を写した写真(出血や切開箇所など)が含まれます。苦手な方や体調の優れない方は閲覧をお控えいただくか、十分にご注意ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療内容 | 歯周基本治療(歯石除去・ブラッシング指導)、歯周外科処置 |
| 年齢 | 50代 |
| 性別 | 女性 |
| 期間 | 約5か月(初診から歯周外科処置終了まで) |
| 費用(税込) | 保険診療 |
| リスク・副作用 | 術後の痛み・腫れ・出血、歯ぐきが引き締まることによる知覚過敏 |
1. 患者さんのご紹介(主訴・お悩み)
今回の患者さんは、50代女性の患者さんです。市の歯科健診で歯周病の疑いを指摘されたことをきっかけに来院されました。
これまでお口のトラブルで困った経験がほとんどなく、痛みや違和感などの自覚症状もなかったため、健診結果を聞いて驚き、不安を感じていらっしゃいました。
「今まで問題なかったのに、本当に歯は大丈夫なのだろうか」と心配される一方で、しっかりと歯周病治療に向き合いたいというお気持ちをお持ちでした。そこで、インターネットで歯周病治療に力を入れている歯医者を調べ、当院を見つけてくださいました。
ご自身のお口の状態を正しく知り、将来的なお口の健康維持のために適切な治療を受けたいというご希望がありました。
2. ご来院時の状態と診断
精密検査の結果、「広汎型慢性歯周炎(ステージⅢ、グレードB)」と診断され、重度の歯周病が進行している状態でした。
レントゲン写真では、歯を支える土台となる骨(歯槽骨)が広範囲にわたって吸収している様子が確認されました。ご本人が気づかないうちに炎症が静かに進行しており、骨が退縮してしまったことで、一部の歯にはすでに動揺(グラグラする状態)も現れ始めている深刻な状態でした。

歯周病は、ある程度進行するまで痛みなどのサインが出にくい「サイレントディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれます。今回のケースも、もし健診を受けずにそのままにしていれば、将来的に多くの歯を失うリスクが高い状態でした。患者さんには検査結果をお伝えし、まずは進行を抑えるための継続的な治療が必要であることを共有しました。



歯垢(プラーク)や歯石に潜む細菌によって、歯を支える土台である歯ぐきや骨が広範囲にわたって破壊される病気です。加齢や生活習慣が関与し、進行すると歯が抜け落ちる原因となります。
3. 治療計画
患者さんの不安に寄り添い、根拠に基づいた以下の段階的な治療計画を立案しました。
①初診時精密検査
パノラマレントゲン撮影、歯周病精密検査(歯周ポケットの深さ測定)、口腔内写真撮影を行い、現在のお口の状態を細部まで客観的に記録します。
②リスク検査とカウンセリング
唾液を採取してお口の中に潜む菌の分布を調べる「リスク検査」を実施しました。これにより、なぜ歯周病が進行したのかという根本原因を可視化し、患者さんと情報を共有しながら今後のケア方針を相談しました。
③歯周基本治療の開始
まずは歯科衛生士によるSRP(歯根面の歯石除去)と、患者さんのお口に合わせたオーダーメイドのブラッシング指導を開始しました。
④再評価と外科処置へのステップ
基本治療後の再評価検査において、改善が見込めないほど深い歯周ポケットが残る箇所については、将来的な再発を防ぐために歯周外科処置を併用する可能性を事前にお伝えしました。
スケーリング・ルートプレーニングの略称です。歯ぐきに隠れた深い溝(歯周ポケット)の中にある歯石を取り除き、さらに歯の根の表面をツルツルに磨き上げることで、細菌の再付着を防ぎ、歯ぐきの改善を目指す専門的な治療です。処置の際は、痛みに配慮して局所麻酔を施して行うため、負担を抑えながら治療を受けていただけます。
4. 治療時(手術当日)
約3か月間にわたり、計6回のSRPを含む歯周基本治療を継続しました。粘り強く治療を続けた結果、多くの部位で歯ぐきの引き締まりが見られましたが、数箇所の深いポケットについては器具が届かず、細菌の除去が困難な状態でした。そのため、深い歯周ポケット内の感染源を除去するため、歯周外科処置(フラップ手術)へと移行しました。
①オペ前の準備
歯科衛生士がお口全体のクリーニングを行い、細菌数を減らした清潔な環境を整えます。その後、術前の状態を写真に収め、局所麻酔を行いました。
②オペの実施
歯ぐきを一時的に切開し、肉眼で直接確認しながら根の深い部分に強固にこびりついた感染組織や歯石を除去しました。

③再生療法の適用
感染源を取り除き、クリーンになった部位に「リグロス」という歯周組織再生医薬品を塗布しました。リグロスは、歯周組織の回復を促す治療として使用されています。最後に縫合を行い、処置を完了しました。
当院では、治療の透明性を確保するため、術中も口腔内写真を撮影し、どのような処置を行ったかを記録しています。
歯ぐきを一時的に切開し、歯の根を直接目で確認できる状態にする手術です。通常の器具では届かない深い歯周ポケットの奥にこびりついた汚れや、感染した組織を取り除く処置です。 汚れを取り除いた後は、歯ぐきを元の位置に戻して縫合します。
歯周病によって失われた歯周組織の回復を促す目的で使用される歯周組織再生剤です。成長因子(細胞を増やす成分)の働きにより、血管を新しく作ったり細胞を増やしたりすることで、本来備わっている再生能力を引き出し、歯周組織の回復を促します。
5. 治療後・予後




術後は、傷口の治癒を促すためにレーザー照射を行い、組織の回復をサポートしました。外科処置の直後は傷口への刺激を避ける必要があり、患者さんご自身での十分な歯磨きが難しいため、毎週来院をいただきました。通院時には歯科医師や歯科衛生士が責任を持って専門的なクリーニングを行い、術後のトラブルを防ぐため慎重に状態を確認しました。
現在、歯ぐきは健康的なピンク色に引き締まり、歯周病の進行が落ち着いた状態を維持しています。今後はこの良好な状態を維持するため、定期的なメンテナンスへと移行します。最初は毎月のペースで通院いただき、お口の状態が長期的に安定していることを確認しながら、徐々にメンテナンスの間隔を調整していく方針です。
歯周病は自覚症状がないまま進み、気づいた時には手遅れになっていることもある病気です。健診で指摘を受けた方や、歯周病に少しでも不安がある方はぜひ一度当院へご相談ください。
監修
甲田 恭子
院長/歯科医師・歯学博士
日本歯周病学会専門医・指導医
日本臨床歯周病学会認定医
日本歯科保存学会専門医・指導医
臨床歯科麻酔管理指導医
日本口腔衛生学会専門医
日本歯科医師会生涯研修認定医
日本歯科医師会認定産業歯科医
第一種歯科感染管理者
キャリアコンサルタント
福岡県立九州歯科大学 卒業
東北大学大学院歯学研究科 博士(歯学)
安久 修平
副院長/歯科医師・歯学博士
日本歯周病学会認定医
臨床歯科麻酔管理指導医
東北大学歯学部 卒業
東北大学大学院歯学研究科 博士(歯学)